人が動くと、音楽が生まれる

奴隷貿易、出稼ぎ、亡命、占領。人の流れが、どの音楽を生み、どんなジャンル名を残したか。41の移動を、地図と名簿でたどる。

1858年の世界の移民を、国ごとに色分けした太い帯で描いた手彩色の地図。ヨーロッパから北アメリカへ向かう帯が最も太い。
シャルル・ミナール『1858年の世界の移民』(1862年)。帯の太さが人数を表す。このページの地図はこの描き方を借りている。

41の移動と、そこで生まれた音楽

帯の色は人を動かした理由、太さは人数の桁。帯を押すと、その移動で生まれた音楽と名前が出る。

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音楽からたどる

好きなジャンルを選ぶと、その音楽に流れ込んだ人の移動だけが地図に残る。

人を動かした五つの力

同じ太鼓の音も、運ばれたのか、働きに来たのか、逃げてきたのかで、たどり着いた先の響きが違う。理由ごとに、いちばん大きな数字と一枚の写真を置いた。

名前に残った人の流れ

ジャンル名には、運ばれた人の言葉、追われた土地の名前、外から貼られた呼び名が残っている。押された判のように、名前の由来を並べた。

    シカゴの南部地区に並ぶ木造の長屋と外階段。
    1941年、シカゴ南部地区の長屋(ラッセル・リー撮影)。南部から移った人々が暮らし、教会とクラブでブルースとゴスペルを鳴らした。
    パナマ運河の労働者が住んだ、高床の木造宿舎が並ぶ通り。
    パナマ運河の建設労働者の宿舎(クリストバル)。カリブ海の島々から来た人々の子孫が、のちにスペイン語のレゲエを歌った。
    ターバンを巻いたトゥアレグの音楽家たちが、エレキギターを持って舞台で演奏している。
    ティナリウェン、2010年のニュルンベルク公演。リビアとアルジェリアの亡命者の暮らしの中で結成された。

    移動の名簿

    船会社は乗客の名前、出港地、行き先を一行ずつ書き残した。ここでは人の代わりに移動を一行ずつ並べている。行を押すと、地図のその帯が選ばれる。

    左:エジソン社の記録映画『エリス島に上陸する移民』(1903年)。

    エンパイア・ウィンドラッシュ号の乗客名簿の見出し部分。船名、到着港ティルベリー、乗船港の欄がある。
    1948年6月、ティルベリーに着いたエンパイア・ウィンドラッシュ号の乗客名簿。

      この地図の読み方と限界

      年は、その移動が主に続いた期間。人数は到着した人、または移動した人の推計で、多くは幅のある数字を丸めている。帯の太さは人数そのものではなく桁を表し、記録のない移動は点線で描いた。

      一つの音楽は、一つの移動だけからは生まれない。ここでは、その音楽が形になるのに欠かせなかった移動を選んでいる。たとえばサンバには奴隷貿易と、奴隷制廃止後のバイーアからリオへの移住の両方を結んだ。

      地図の線は実際の航路ではなく、出発地と到着地を結んだ図式。太平洋を渡る移動は、地図の右端から左端へつないでいる。奴隷貿易の人数はSlaveVoyages(大西洋奴隷貿易データベース)の推計の概数。

      楽器の流れは「楽器の系譜地図」、ジャンルの枝分かれは「ジャンルの系譜地図」で。